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勝手にしやがれHeyしすたー

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あの日の亨ちゃん


   傷だらけの天使、第19話「街の灯に桜貝の夢を」を観た。

   って、果たして、何度目だろう・・・。



あの日の亨ちゃん




   なんていきなり書いても、普通の人には何が何やら?

   まずは、このドラマの(以下、傷天)概略なんかが必要でしょうか。
   苦手なんだけどね。そういうの書くの。


   74年にやってたドラマ。
   当時私は3歳くらいなので、観てなかったでしょうなーー。

   だいぶ前に書いた、はまりページの「その名は豊さん」から抜粋。

   『岸田今日子さんが探偵事務所の社長。岸田森さんがそのしもべ。
   その事務所の雇われ調査員が修ちゃん(ショーケン)と亨(あきら)ちゃん(豊さん)。』

   で、その探偵事務所は、なんというか、かなーりあくどそうな事をやっていて、
   いつも億単位のお金が動いており、社長である(岸田今日子さん演じる)
   綾部貴子さんは、かなりのやり手。

   その雇われ調査員、といっても、修ちゃんたちに深いところまでの説明は一切
   なし。

   ただの兵隊、という感じ。

   「あれやってこい」「これやってこい」で、一回十万くらいの報酬。

   また、その仕事内容は、いつも思い切り危険な、命いくつあっても足りませんぜ
   の仕事。で、十万か。(今の十万とは、もちろん違うはずでも)

   とはいうものの、設定として、修ちゃんは高校中退、亨ちゃんにいたっては、
   中学中退である。
   お二人の性格からして、まっとうなお仕事に就けそうもないし(亨ちゃんは、
   自動車修理工の仕事とかやってるが)、目先の十万に、つい目が眩んでしまう
   ・・・ってとこ。

   コンスタントに仕事があればまだしも、ずっと綾部さんからの電話がなかった
   りもするから、二人はいつも飢えている。

   最後に残っていたなにか(本とに食べ物か? それはなに??)を、必死で
   取り合い、口に入れた亨ちゃんを、修ちゃんが本気で、びしばししばいてる
   シーンが、冗談にならないのである。


   さて、そんなわけでの19話。
   (思い切りネタバレしますので、知りたくない人は、この先読まないでください)


   例によって、綾部探偵事務所からの仕事が延々なく、なーんと亨ちゃんは、
   水商売をやってる明美ちゃんの「ヒモ」になっている。

   ヒモと言っても、亨ちゃんに恋人がいるというのは、全24話中、この話くらい
   のもの。
   出て来るゲスト女性は、みーんな修ちゃんを好きになっちゃうからな。
   (ショーケンだし・笑)

   亨ちゃんが主役という事もあり、この話は、私が一番大好きな話で、何回
   観たか分からない。
   十数回は観てると思う。

   恋人の明美ちゃんを演じるのは、若かりし日の高橋恵子さん。
   (この時関根さんだったか?)
   もう反則なくらい、かわいいのだよ!!

   そんな二人が、所帯を持ちたい、スナックを持ちたいと思ってみても、
   明美ちゃんのキャバレー勤めも、それほどもらえるわけじゃなし、亨ちゃんは
   だめだめだし、そこで明美ちゃんが思いついたのが、「ジュータンバー」だった。

   昔はそんなのあったんだねえ。

   修ちゃんと亨ちゃんの愛の巣(いや、真面目にそんな感じ)、ペントハウス。
   これは綾部さんとこで、ただで借りてる部屋なのだけど、そこで、明美ちゃんが、
   バーをやり(女子大生という触れ込み)、二人がお客を連れてくるというわけ。

   酔っ払ってる修ちゃんを15パーセントのマージンでOKさせた。
   とは言っても、いくら酔ってるにしても、こんな割の悪いことを、修ちゃんは
   OKするはずがないんだけど、やはりそこは、かわいい亨ちゃんのため。

   ・・・なんて事は言わず、モンクたらたらなんだけどね。

   当たり前だけどいつも二人は、そこで寝てるわけだから、深夜喫茶なんかを、
   点々とするのだ。
   今だったら、そんなには困らないだろうけどなぁ、・・・そうだ。子供の頃、
   コンビニが出来た時は、ほへーと思ったもんねえ。
   (しかもこの話、冬だし)


   また修ちゃんの客引きがうますぎ。
   でもって、本来こういうことを、割とうまいことこなす亨ちゃんが、嫉妬心
   のせいで、てんでだめってとこもいい!

   修ちゃんが、すけべいおじさんを、ペントハウスに連れて行くのを、見送る
   亨ちゃんの目がまたいい!!

   捨てられたわんこの目です。
   豊さんは、こういうみじめったらしいのが、すごくうまいんだよ。本とは。
   今はもう、見れないだろうけども。

   で、じわじわ貯まってゆく、亨ちゃん名義の通帳の額。

   二人がある日、探偵事務所へお昼寝をさせてもらいに行き、その話を聞いた
   辰巳さん(岸田森さん)、大爆笑のあと、

   事務所が貸してやっている部屋を、勝手に又貸しするとは何事!と、即刻
   出て行くことを要求する。
   (この話のとき、社長は、海外旅行中で不在だった。本とにバカンスだった
   のかも)

   で、一度そんなことを言った後に、仕事依頼である。

   叩き上げの土建屋(懐かしい響き)、板倉社長を、女にたらし込ませ、
   濡れ場写真を撮れ。成功報酬100万円。
   社長失脚を狙う専務からの依頼であるらしい。

   まんまと明美ちゃんと板倉社長を引き合わせ(亨ちゃんが変質者役までやって)
、   辰巳さんの出した三日間という期限で、しっかり社長をたらし込み、写真も
   撮れ、フィルム入手した夜、おでん屋台で語り合う、修ちゃんと亨ちゃん。

   修ちゃん「・・・このフィルムを、一番欲しがってんの、誰だと思う?」
   亨ちゃん「そりゃあ・・・、辰巳さんに依頼した、どっかの専務じゃないの?」

   一番欲しがってるのは、板倉本人だと言う修ちゃん。

   辰巳に渡しても100万にしかならない。
   今時、100万で何が出来る?

   板倉に直接売れば、一千万にもそれ以上にもなる。

   ヤバイよ・・・と呟く亨ちゃんに、修ちゃんは言う。

   ヤバくても、でっかく儲けよう。スナックを持つためにも、所帯を持つため
   にも、出来るだけ高く踏んだくろう。

   そしてこうも言うのだ。

   「今回の取り分は8・2、おまえが8だ。祝儀代わりだ」と。


   翌朝、亨ちゃんは、バラの花一輪持ってペントハウスへ。

   明美ちゃんに、修ちゃんの提案を、「ま、オレが考えたんだけどさ」と、
   得意気に話す。
   そして、照れ臭げに、明美ちゃんから横向きになってバラを差し出し、
   プロポーズ。

   「いろいろ苦労かけたけど、オレ、所帯持ったら、もう二度とあんな悲しい
   ことさせないよ。約束しちゃお・・・」


   ところが。

   明美ちゃんは何も言わずに、そのフィルムを渡してくれと言う。

   なんと明美ちゃんは、板倉社長を好きになってしまったのだ。
   黙っていられなくて、すべて話してしまったという。

   「なんであんなジジイがいいの? 金持ちだから? だったら、オレも
   一生懸命働くからあ!!」
   大粒涙を、ぽろぽろ零して、必死に訴える亨ちゃん。
   「じゃあ、オレはどうなるのぅ?」

   明美ちゃん「あんたには、修さんがいるじゃない」

   亨ちゃん「そんなの勝手だようう・・・、男同士で何が出来るって言うんだ
   よおお・・・!!!」

   ここのシーンは、何度観ても、笑いと涙なしには観れないんだよ。

   ひどいよ明美ちゃん・・・。


   結局、「ごめんね・・・」と部屋を出て行った、明美ちゃんの立ち去る足元に、
   亨ちゃんの投げられたフィルムが、悲しく転がるのだ・・・。


   しかし、辰巳さんの「箱根の山中で、身元不明の女性死体が見つかった」と
   いう情報で、明美ちゃんが板倉に、殺されてしまったことを知る二人。

   このシーン、亨ちゃんのセリフ、一言もない。

   かっと瞳を開き、わなわなと震え・・・、その後、虚ろな、空っぽの表情の
   まま、人形のように停止する。

   そして瞳がゆっくりと動く。

   怒りに燃えているはずなのに、背筋がぞくっとなるほど冷たく、憎悪がどろり
   と溶け込んだ瞳。

   瞳にあるのは、青白い炎か。


   当時たぶん、24、5歳だった豊さんに、どうしてこんな表情が出来たのだろう。

   この時、豊さんは、完璧に亨を演じきっていたのか。

   それとも、乾亨になってしまっていたのか。


   そして、物語は、救いのない終末へと向かう。

   傷天は、時に、ちょっとほのぼのとした、希望の見えるラストの話もあるが、
   ほとんどが、救いのない終わり方である。

   だいたい、傷天の物語の終わり自体(最終回)、そうなのであるが、観客は、
   傷天の世界の外部に取り残されたまま、やるせない気持ちいっぱいになって、
   茫然とするしかないのだ。


   亨ちゃんは、もういない。

   そしてきっと傷天世界の、修ちゃんが死んだ時、第2の死を迎えるのだろう。



   (05・04・02)


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